ドーナツ

ドーナツ経済学の基本的な考え方

※ウイキペディアなどを併せてご覧頂くと良いと思います。

「ドーナツ経済学」は、英国の経済学者ケイト・ラワースが提唱している経済学の理論です。

20世紀後半頃から、経済指標の代名詞とも言えるGDPに対して懐疑的に思う人が増えました。曰く「GDPが伸びたからといって、その国の人々が幸せになっているのだろうか?」と。イギリスのサッチャー首相、アメリカのレーガン大統領の政策に代表される新自由主義的なやり方が人々を決して幸せにしていないのではないかということです。実際に、アメリカでは1970年以降、GDPが伸びているのにも関わらず、人々の幸福感は伸びていないという研究もあります。

そうした疑念の声の中、ブータンのGNH(国民総幸福)などが注目されはじめました。そして、2000年代に入ると新しい指標への関心は高まり、私たちの幸福感をどのように測れば良いのか議論が続いています。

一方で、SDGsに代表されるような世界レベルの課題が山積しています。中でもその解決にもっとも急を要するのが「気候変動」の問題です。

新自由主義に見られる、効率性と短期的な利益の最大化を優先し、GDPの伸長を重要視する経済のあり方を転換する必要があるのではないか。そして気候変動に代表される国際的な社会問題を解決しつつ、人々が幸せに暮らすために役立つ経済学(経済のあり方)はいかに可能か。そのための1つのアイデアが「ドーナツ経済学」です。

基本的な考え方はとてもシンプルです。

①「私たちの暮らしを支えるには食料と水をはじめ、ある程度の種類と量の物資が必要である。」

②「地球が壊れるような方法で、天然資源を使ってはいけない。」

このたった2つのことを満たすように考えられています。①を「SOCIAL FOUNDATION(社会的基盤)」②を「ECOLOGICAL CEILING(生態学的な上限)」と表現しています。①と②を同心円として表現し、それぞれの円を境界線として①と②の間に収まるような資源の使い方をする暮らし方(①以上②未満の暮らし方)。それが世界のどの地域でも実現できること。「SOCIALLY JUST and ECOLOGICALLY SAFE」(社会正義と生態学的安全)を目指そうとするのが「ドーナツ経済学」です。

ローカルとグローバル

「シティ・ポートレイト」の基本的な考え方は、上記の①「SOCIAL FOUNDATION」と②「ECOLOGICAL CEILING」に加えて、③「LOCAL ASPIRATIONS(地域の欲求)」と④「GROBAL RESPONSIBILITIES(グローバルな責任)」の視点が加わります。「①と②」「③と④」をかけ合わせて4つのレンズを通して都市を観察(INSIGHT)します。

普段私たちは「LOCAL SOCIAL」のレンズを主に使って、社会を見ています。それはどちらかというと手で触れるような世界です。これに様々な情報を加味して、自然界や世界について視野を広げることが大切です。

「CITY PORTRAIT CANVAS」に①と②を加味して図示すると以下のようになります。

そのほか「シティ・ポートレイト」を作成するときに役立つ情報はDEALのサイト内「ドーナツを解く(Doughnut Unrolled)」のページにまとまっています。>>>こちら

https://doughnuteconomics.org/news/48

プラネタリー・バウンダリー(地球の限界域)

「ドーナツ経済学」が生まれる過程で大きなヒントになっているのが、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界域)という考え方です。2009年にヨハン・ロックストームとウィル・ステファンが率いる研究者のチームが提唱しました。そこでは地球の持続性を測る指標を9つの要素(プロセス)にまとめています。上記の②「ECOLOGICAL CEILING」を具体的に表現しています。(「CITY PORTRAIT CANVAS」のワークシート、「GLOBAL ECOLOGICAL」のシートに組み込まれています。)

※詳しくは書籍「地球の限界」(ヨハン・ロックストーム著、2022年)を参照ください。